若年性パーキンソン病を患ってから、トイレで起きたこと。「こんな姿なのに、生理があるなんて」

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トイレに関する話題で、「便秘がちなんだよね」といった話はたまに聞きます。 

便秘は多くの人が経験したことがあり、共感を得やすいため、話すことにあまり抵抗を感じません。

しかし「今日トイレに間に合わずに漏らしてしまった」 と言われたら、返答に困りませんか?

「私も」と言う人はほとんどいないと思います。

若年性パーキンソン病の人たちのトイレ事情はとても深刻なのです。

若年性パーキンソン病とは

40歳以下で発症するパーキンソン病を「若年性パーキンソン病」といいます。

その発症率は、パーキンソン病が1万人に100人の割合で発症するのに比べ、1万人に10人〜15人と少ないのが特徴です。

パーキンソン病は神経伝達物質である「ドーパミン」が減少することで発症します。

ドーパミンは私たちのやる気や快感、運動調節に関わるホルモンのひとつですが、ドーパミンが減少すると運動機能に障害が出てきます。

なにか物を取ろうとしても、身体をどう動かせば良いのかわからない。歩き始めの一歩が出せずすくみ足になる。歩き出したら止まることができず、なにかにぶつからなければ止まれない(突進歩行)。その他、思考力や集中力の低下など、さまざまな症状があります。

若年性パーキンソン病の場合、こわばりや無表情(仮面様顔貌)、無動などが主な症状としてみられますが、症状は多岐に渡るため、必ずしもそうであるとは言えません。

そのため同病であっても、進行具合や治療薬、服用の量は、人によって全く異なります。

また同一人物であっても、時間帯やその日の体調によって症状が異なるため、本人でさえも予測できないこともあります。

 

31歳で「若年性パーキンソン病」と診断 

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私が若年性パーキンソン病と診断されたのは2014年12月、31歳のときでした。

当時は小学1年生と幼稚園の子どもふたりを育てながらパートで看護師をしていました。

2年ほど前から、右足の運びにくさや右手の動かしにくさなどの違和感を感じており 「絶対なにかおかしい」 という確信に近いものはありました。

整形外科を受診すると「胸郭出口(きょうかくでぐち)症候群」と診断されました。しかし、納得がいかず、病院を数軒渡り歩くことになります。

納得がいかなかった理由は、これまで看護師として脳神経の疾患に携わることが多かったため「脳に何かあるのかもしれない」と頭をよぎったからです。

なんらかの病気であることは確か。医師が病名を付けてくれないと諦めがつかない。前が見えない生活に、毎日が不安でいっぱいでした。

それから、徐々に日常生活に支障が出てくるようになりました。 

大学病院で看護師をしていた主人が、医師に相談を持ちかけたところ「なるべく早く紹介状をもらって大きな病院に行ったほうがいい」 とアドバイスを受け、大学病院へ向かいました。

私はそうして、若年性パーキンソン病と確定診断されたのです。

若年性パーキンソン病のトイレ事情

若年性パーキンソン病の患者にとって、大きな悩みがトイレです。

私の場合、オフ(薬が効いていない)状態だと、まずトイレに行くのも大変です。

はじめの一歩が出ず、ようやく一歩が出たかと思ったら、今度は突進歩行になり止まることができません。何度もトイレの前を通り過ぎ、玄関まで行ったことがあります。

無事にトイレのドアを開けることができても、スリッパを履くことができないこともありました。

このように、オフ状態になると「日常的な行動」ができなくなります。

トイレに入った時点で「トイレを済ませたい」というスイッチが入ってしまうため、急がないと漏らしてしまうのです。

大変なのはここからで、便器に座るために「小回り」しなければなりません。 私たちパーキンソン病の人たちにとって「小回り」は難しい動きのひとつです。

無事に座る態勢が整ったら、ズボンであればボタンを外しファスナーを下さなければなりません。スカートであればめくりあげます。

オフ状態で動きにくい時は、これらの動作に時間を要します。

一度だけ間に合わなかったことがあり「あっ、とうとうダメだったか……来る時がきた」と思ったことがあります。

私にとって、下着の上げ下げは難易度が高く、集中していると前のめりになり頭を壁にぶつけたり、ヨダレを垂らしてしまうこともあります。

「こんな姿なのに、生理があるなんて」

生理の時はさらに難易度が増します。

通常なら汚れたナプキンを剥がし小さくまとめゴミ箱に捨てますが、私は、小さくまとめることができなかったり、新しいナプキンをうまく装着することができません。

思考力も低下しているため、ナプキンを外し、小さくまとめて捨てて、新しいナプキンをつけるという一連の手順がわからなくなるときさえあります。

「生理も止まってしまえばいいのに。こんな姿なのに女として生理があるなんて」

何度そう思ったかわかりません。

若年性パーキンソン病に限らず「トイレが間に合わなかった」という事実は、羞恥心と共に 大きなトラウマとして心に残ります。

そして二度と経験したくないと、水分摂取を制限をしたり、外出することをためらうようになります。 私自身、水分を摂ることや遠出を控えるようになりました。

私は在宅時はゴムタイプのズボンか、ボタン付きのズボンであればボタンを外したままにし て過ごしています。 トイレに行きたくなったとき、すぐにズボンを下ろすことができるようにです。

介護用のオムツは、“通気性抜群”、“ゴワゴワしない”など書かれていますが、やはりどこからどう見てもオムツには変わりありません。

機能性はもちろん最重要項目だと思います。 しかし若年者にとって、気持ちの面でデザインもそれと同じくらい重要です。

私が若年性パーキンソン病の情報を発信するわけ

 私が若年性パーキンソン病と診断されもうすぐ7年が経ちます。 この7年間で私の日常生活は大きく変わりました。

診断当初は「若年性パーキンソン病」と検索しても十分な情報を得られず、また当事者の体験談もあまりありませんでした。

そんななか第3子を妊娠・出産しました。 若年性パーキンソン病の人が妊娠・出産した場合、どのように子育てをしているのだろう。 日々を乗り越えるために、どんな工夫をしているのだろう。そう思いネット検索しても、知りたい情報にたどり着くことができませんでした。

そこで私は、自ら発信していこうと思うようになりました。2017年3月から「若年性パーキンソン病と子育て」に関するブログを始めました。

2018年9月には「第1回・若年性パーキンソン病の会」を開催しました。 2019年11月に第3回目が終了し、第4回目からは全国を転々として行く予定です。

「できないこと」が増えていく。それでも、生きるために働く

また若年性パーキンソン病の人たちと交流していく中で、ある共通の悩みを持っていることがわかりました。

それは就職活動と社会的認知の低さです。

私自身、発症してからの7年間で就職活動と社会的認知の低さは実感していました。

パーキンソン病にはオン、オフという状態があり、オンの時は比較的動くことができますが、オフになるとまるで人が変わったように動きにくくなります。

これらは、なかなかうまく伝えられず、周囲から理解を得ることが難しいです。

生きていくために、若年者はこれからも働き続けなければならなりませんが、症状は進行していく病気です。つまり「でできないこと」が増えていくのです。

働きやすい環境が整っている会社もありますが、低賃金になります。しかしそれでは若年性パーキンソン病の人は家庭を養うことができません。

若年性パーキンソン病を発症した人の中には、給与が下がることが心配で、職場に伝えることができていない人も少なくありません。

私は「若年性パーキンソン病の人が主たる生計者として家庭を養えるほどの給与保障をする」という最終目標を掲げた会社、Lim(リム)を設立しました。

当社では、主に下記のような事業を展開していきます。
・当事者からのリアルな声を集めたサイト運営(作成中)
・当事者がオフでも着脱しやすく、漏れの不安が少ない、おしゃれな下着の製造
・認知拡大のための講演活動(小学校や介護看護学校を中心に)

このほか、パーキンソン病専門の就職支援や、旅行会社と共に患者に配慮した旅行を提供するなど、実現に向けて歩んでいます。

若年性パーキンソン病は「できないこと」が増えていく病気です。

一方で、若年性パーキンソン病だからこそもつ一人ひとりの経験値があることも確かです。そうした経験を生かし、お互いのオフを補いながら仕事ができる仕組みづくりを、今後も続けていきたいです。

(文・岩井里美)

 

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(この記事は2020年1月20日ランドリーボックス「「こんな姿なのに、生理があるなんて」私が若年性パーキンソン病を患ってから、トイレで起きたこと」より転載しました。)

 

Source: ハフィントンポスト

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