新型コロナ、他国に出遅れる安倍政権が抱える巨大リスク。命を奪うのは感染症だけではない

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このページは:約 < 1 分で読めます新型コロナウイルス感染症の実体経済への影響に関する集中ヒアリングで発言する安倍晋三首相(手前)と西村経済再生相=3月24日、首相官邸

驚いたコロナ担当相発言

フジテレビ「Mr.サンデー」(3月22日)に出演したとき、新型コロナウイルス対策に当たる西村康稔経済再生相に直接質問する機会があった。

私がリーマンショック級あるいはそれ以上の打撃が見込まれる以上、消費税減税が必要なのではないか、と問うと西村氏は、消費税を下げるとしても、下げる前の需要は落ち込み、また上げるとなると、(直前の)駆け込み需要後の消費が落ち込むことなどを理由に、減税に否定的な見解を並べた。

さらに驚いたのは、新型コロナウイルスの流行が収まったという前提ではあったが、「今年6月〜7月にかけて国内観光のキャンペーンをやりたい」と言ったことだ。

3月23日に政府の経済対策として、「旅行代の助成」を検討していることが報じられたことと発言の方向性はあっている。

その後も立て続けに続報が出ているように、安倍政権は一律の現金給付、消費税の減税も見送る方向で議論を進め、何やらクーポンを配る程度で決着をつけるという。

以上を踏まえれば、安倍政権の経済政策はおよそ的外れであり、日本経済の減速は避けられないだろう。

小池百合子都知事

安倍政権の経済政策はまったくもって遅れている

アメリカでは与野党が共闘し、強い外出制限などに対応して220兆円にも達する経済対策を打つことで大筋合意に達した。

その中身はと言えば、大人1人当たり1200ドルを支給する現金給付案を軸になり、「4月をめどに家計に現金を給付するほか、企業支援にも9000億ドルを充てる。国内総生産(GDP)の10%にあたる巨額対策で、景気の底割れ回避を目指す」(日経新聞)というものだ。

公衆衛生上で効果があるとされる外出制限など社会的隔離政策と、経済政策をセットで打つという常道をアメリカは選んだ。

それに比べて、日本の経済政策はまったくもって遅れている。

私は消費減税に加え、納税猶予、社会保険料の減免は待った無しで実行すべきだと考えている。さらに、国民全員に一定額を一律給付した上で、一定所得以上の人々に関しては確定申告もしくは年末調整で対応させればいいというスタンスだ。

周りを見渡せば、5月末までの契約を3月末で打ち切られた、予定していた取材がすべてキャンセルになりまったくお金が入ってこない、8月に予定していた仕事がキャンセルが通告され数百万の損失ーーといった声ばかりが聞こえてくる。

2020年2月の倒産件数は、6ヵ月連続で前年同月比を上回った。6カ月以上の連続増加は、リーマン・ショック(15カ月連続)以降では最長だ。新型コロナウイルスの関連倒産はまだ少数であり、倒産は今がピークなのではなく、今後より本格的に増加するというのが経済の専門家たちの概ね一致した見解だ。

 

感染症の専門家は、経済のことは「わからない」

外出やイベント中止の要請で広がる自粛ムードが、トレードオフの形で経済を止める。

先日、感染症対策に詳しいある医師―公衆衛生学を専門とする—に、「感染症というリスクに対応した政策が、経済の収縮というリスクを生み出す問題をどう考えているか」と聞いてみた。

医師は「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議のメンバーも含めて、経済については専門外なので、わからない」と言った。この姿勢は専門家として極めて真っ当であり、正しい。

彼らは経済リスクまで具体的に織り込んで発信しているわけではない。感染症対策の専門家は、経済については門外漢なので、あくまで感染症対策という観点でしか答えられない。

感染症の専門家からすれば、確かに今の東京は危機だろう。私も危機であることは理解している。「密閉・密集・密接」を回避すべきだし、感染が爆発すれば、医療体制が崩壊しかねないことも事実だ。これは絶対に回避すべきだろう。

だが、ここで考えてほしい。人の「命」を奪うのは何か?という問いだ。

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「風が吹けば桶屋が儲かる」の逆現象

例えば、リスクが高い場所として名指しされているライブハウスにしても、屋内での商談会にしても、スポーツジムにしてもその周辺には働いている人がいる。彼らには彼らの生活がある。

「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざがある。現実の経済をよく反映している言葉だ。まったく関係がないようにみえて、風が吹けば、別のニーズが生まれ、そのニーズに応えた先に、また新たなニーズが生まれ、桶屋の生産増につながる。経済は思いも寄らない形でネットワークがつながっている。

今の日本はこの逆で、ライブハウスやジム、飲食店の経営がうまくいかないとなれば、巡り巡って別のニーズの減少を生み、そのニーズの減少は別の減少を呼び込み、さらに生産が低下ということが起きることは確実な局面にある。

「大規模イベント」に相当するであろうプロ野球もJリーグも選手だけではなく、多くのスタッフを抱え、地域経済に影響を与える存在だ。「今は仕方ない」で耐えられる時期は限られている。

 

感染リスクと経済リスク。両方が政治の責任。

東京で感染爆発(オーバーシュート)が起きる可能性が指摘される真っ只中ではあるが、だからこそ強く主張したいのは、感染症と同じように経済リスクもまた、回避すべきリスクであるということだ。

2011年、原発事故後の福島で、なぜ震災関連死が津波などの直接の死者を上回っているのか。産業へのダメージが一因であることは間違いない。

では、誰の責任でリスク対策をやるべきなのか? それは間違いなく政治の責任だ。感染症対策と経済のバランスを考慮し、強い行動制限を要請した以上、強い経済政策を取っていくというのが他の国では当たり前のようになされている。

専門家に責任を負わせるのでなく、安倍政権がリードすべき

繰り返しておこう。新型コロナウイルスの専門家会議はあくまで感染症対策の専門家であり、社会や経済の専門家ではない。専門家にすべての責任を負わせるのではなく、政治が経済対策をリードしなければ、景気は一気に後退する。

景気の後退は、感染症と同様に命に直結する。

専門家は自粛ムードの緩みを声高に指摘しメディアも盛んに伝える。だが、それ以上に深刻なのは安倍政権の経済政策だろう。このままいけばコロナ関連倒産、関連死は確実に増えていく。

 

(文:石戸諭/編集:南 麻理江)

Source: ハフィントンポスト

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