「報ステ」でハラスメント事案。元テレビ朝日報道局員の私が伝えたいこと

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テレビ朝日の看板番組である報道番組「報道ステーション」で、ハラスメント事案が起きた。番組スタッフによるセクハラを他のメディアが報じた後に、番組公式サイトでハラスメントがあったことを説明した。

この問題を聞いた時に思い浮かんだのは、2018年春に明らかになった財務省事務次官(当時)によるテレビ朝日記者へのセクハラだった。テレビ朝日は、記者から相談を受けていたにも関わらず、適切な対応をとらず、週刊誌報道後になって、会見で記者が被害を受けていたことを説明する流れになった。 

2018年当時、私は朝日新聞の放送担当記者で、テレビ朝日を取材対象としていた。適切な対応ができなかったことを「深く反省しております」としていたテレビ朝日から、今回加害者が出たことを残念に思う。 

私ごとだが、私は元テレビ朝日報道局員だ。大学卒業後、2009年にテレビ朝日に入社した。2012年に朝日新聞に転職し、現在は朝日新聞からハフポストに出向している。 

組織内にいたこともあり、取材対象でもあるテレビ朝日で起きた問題について、次の流れで伝えていきたい。 

①今回の「報ステ」の問題について
②財務次官のセクハラ問題から、テレ朝は変わっていないのか
③テレ朝関係者の受けとめ
④テレビ朝日を「辞めた」私が「変わった」こと

 

①今回の「報ステ」の問題について

「週刊誌報道等について」

9月5日、「週刊新潮」と「週刊文春」が、報道ステーションのチーフプロデューサーから女性スタッフに対する「セクハラ」があったと報じた。

同日付で、報道ステーションの公式サイトに、「当該社員を懲戒処分」したとする文章が公開された。

2019年9月5日発売 週刊誌報道等について

 本日発売された週刊誌などで「報道ステーション」において、ハラスメント事案があったとの報道がありました。
 この件については、現場からの情報を受けた直後の7月はじめから当社のコンプライアンス統括室を中心に慎重に調査を進めてきました。
 その報告を受け、8月19日に、当社人事局・コンプライアンス統括室の責任者(担当役員)である私を委員長とする調査委員会を立ち上げ、事実関係を確認しました。
 その結果、ハラスメントにあたる不適切な行為が明らかになったため、8月30日に当該社員を懲戒処分とし、あわせてその職務を解くことにしました。
 この様な事態が報道現場で起きたことについて、当社としては大変重く受け止め、改めて再発防止をより一層徹底していきます。

2019年9月5日
テレビ朝日 専務取締役
「報道局コンプライアンス事案」調査委員会 委員長
藤ノ木 正哉

関係者によると、懲戒処分の内容は「謹慎」だという。

外部の報道があった後に、公表するーー。その構図は、財務次官の問題の時と似ていると私は感じた。

 

②財務次官のセクハラ問題から、テレ朝は変わっていないのか

2018年4月、テレビ朝日の記者が、財務省の事務次官(当時)からセクハラ被害を受けていたことが週刊誌の報道をきっかけに明らかになった。記者は事前に会社に対してセクハラの事実を報道するように求めていたが、テレビ朝日が事実を明らかにしたのは週刊誌に掲載された後だった。

経緯を振り返る。

この記者は、取材対象の次官から繰り返しセクハラを受けていたため、上司に相談の上、1年間ほど次官との2人での面会を避けていた。

だが、2018年4月、他社が報じたニュースについての裏付け取材を命じられた直後に、次官から連絡を受けた。上司に伝えた上で、このニュースについての取材のために次官に面会したが、この日もセクハラ発言が多数あったため、発言を録音。記者は上司にセクハラの事実を報告し、「報じるべきではないか」と相談した。しかし、上司は二次被害の恐れなどを理由に「報道は難しい」と答え、適切な対応はとられなかった。

記者は「社会的に責任の重い立場にある人物による不適切な行為が表に出なければ、今後もセクハラ被害が黙認され続けてしまうのではないか」との思いから、週刊新潮に連絡。 新潮での掲載後、テレビ朝日が会見を開き、同社の記者が被害を受けたことを明らかにした。

記者からの訴えに対してテレビ朝日が適切に対応せず、週刊誌を通じて次官のセクハラ行為が明らかになる形となったのだ。

テレビ朝日は当時、「社員からセクハラの情報があったにもかかわらず、適切な対応ができなかったことに関しては深く反省しております」としていた。

財務次官セクハラ問題で記者会見するテレビ朝日の篠塚浩報道局長(右、肩書きは当時)=2018年4月19日未明、東京都港区

テレビ朝日広報部によると、財務次官の事案を受けて、「①全役職員のコンプライアンス意識向上のための研修の実施、②内部監査の一環として、ハラスメント対策に特化した監査の実施、③相談窓口の周知徹底やより利用しやすくするための運用の見直しなど」を実施してきたという。

しかし、私はあの問題以降、報道の現場でセクハラに直面する女性たちに対する、テレビ朝日上層部の心ない発言を聞いた。記者たちの前で女性アナウンサーに対して社員がセクハラ発言をする場面にも遭遇した。

外から見ている私は、「テレビ朝日幹部、報道局の上層部は、真剣に変わろうとしていないのではないか」と疑問を持った。 

そして今回、報ステという局の看板番組で、ハラスメント問題が繰り返されたのだ。 

テレビ朝日広報部はハフポストの取材に対し、今回の報ステの事案について、「社員がこのような事態を起こしたことを大変重く受け止めております」と回答している。

 

③テレ朝関係者の受けとめ「全く変わっていない」

財務省の問題を受けて、テレビ朝日は本当に変わろうとしたのだろうか。内部の人たちはどう感じているのか。 

ある報道局の関係者は「全く変わっていない」と話す。

「仕事の打ち合わせ中にも、男性同士で際どい下ネタで盛り上がっていることは多い。報道局内に女性が多ければ『やめてくれ』と言えるが、上に行くほど女性が少なく、指摘しづらい雰囲気がある」

「今回の件も権力を持つ側からのセクハラなのに『優秀な人が刺された』という物言いをする人がいる。セクハラ問題の本質を、財務省の一件があった後の今でも、分かっていない人はたくさんいる」

そういった空気は、報じる内容にも影響していると感じているという。「女性をめぐる事象をニュースに反映させたいと提案したくても、男性が多い中で『浮いて』しまい『女性ネタの人』と『レッテル』を貼られるので、提案できない雰囲気がある

別の関係者は、「財務省の一件以降、コンプライアンス研修もあった。しかし今の報道局上層部や会社幹部は、セクハラをセクハラする側にとっての『リスク』としてしかとらえていないように感じる。セクハラは人権侵害だということが分かっていない」と話す。「今回の『謹慎』という処分も軽すぎると思います」 

「変わったと思う」と話す関係者もいる。「『何かあれば相談して』という声が上の立場の人から出るようになった」 

ただ、それでもハラスメントは存在し続けていると指摘する。「記者らの画面に映った姿を見て容姿についてコメントするなどセクハラ発言をする人はいる。会社のコンプライアンス教育の不足を感じる。今回、報ステの事案も起きてしまった。まだまだ改革の必要は強くあると思う」

 

④テレビ朝日を「辞めた」私が「変わった」こと

テレビ朝日(東京都港区) 

最後に、個人的な経験とテレビ朝日上層部に伝えたいことを書かせて欲しい。

私は大学卒業後の2009年にテレビ朝日に入社した。入社試験を受けたのは、「ニュースステーション」「報道ステーション」への信頼と憧れがあったからだ。 

私は報道局の夕方のニュース番組に配属された。10年前のことなので、現在とは違う部分も多くあると思うが、私の周りではセクハラは日常的にあった。 

配属されてすぐ、自分の体型のことを職場で上司からからかわれたことに驚いた。そして、女性アナウンサーをはじめとした女性の見た目や私生活についての噂話、聞くのも辛い下ネタが、飲みの席だけでなく、職場でも聞こえてきた。 

そういった話を振られた時、どう答えれば会話の流れを変えられるのか、いつも「抜け道」を考えていた。でも結局私は、多くのケースを笑って流した。正直に言えば、自分から性的な話題に「のって」いったこともある。「のれない」「流せない」態度を示すことで、「ノリが悪い奴」「仕事がしづらい奴」と思われてしまうかもしれない、というのが怖かった。納得のいく仕事ができる前に、希望の職だった報道から別の部署に異動になるのは嫌だった。 

それでも、外部から受けたあるセクハラ事案にどうしても耐えられなかった私は、それを上司に訴えた。話を聞いた時の上司の「面倒くさそうな顔」、私が上司に訴えたことを聞いた先輩社員が「減るもんじゃないんだから」と言った時のことは忘れられない。 

自分の存在が日々、少しずつ損なわれていくように感じた。転職をしたのは、それだけが理由ではないが、セクハラは大きな要因の一つだ。 

朝日新聞に転職し、東京を離れ、大阪・福井・千葉に計5年間勤務した。各地域で様々な事情を抱えながら生きている人たちを取材する中で、やはり人の尊厳を傷つける発言・行為や、誰かのあげた声をないがしろにするようなことはあってはならないと強く思うようになった。 テレビ朝日勤務当時は、新卒で入った会社だったこともあり、「会社ってこんなもんなのだろうか…」と、自分の疑問に自信を持てない部分もあった。外に出ることで、疑問を抱く自分を肯定できるようになった。

まして報道は、様々な立場の人の生き方を尊重しながら、よりよい社会について考えるのが仕事じゃないんだろうか。さらに言えば、私はできるだけ、小さな声を聞こうとする記者でありたい。そんな報道の現場でハラスメントが起きているなんて、やっぱりおかしい。 

また私は転職後、ほかにも自分の中に変化を感じた。いつも職場でセクハラを恐れ、セクハラが「やってくる」気配にアンテナをはっていた私が、その怯えがない環境に来た時、仕事のアイデアがより浮かぶようになった。「こんな切り口で取材したい」「こういう調査をしたい」…。自分の頭が自由になり、先輩たちにアイデアの相談をすることが楽しかった。 

社員が抑圧された状況下で仕事をしているのは、組織にとっても非効率じゃないだろうか。メディアの仕事を希望する学生さんも減っていると聞く。「組織のため」という意味でも、熱意のある人材を集め、力を発揮してもらうために、どういう環境を作るべきだろうか。 

私はテレビ朝日に憧れを持って入社した。制作会社の方々を含め、尊敬できる先輩や同期、後輩に出会えた。今内部で会社を変えようと動いている人たちを心から尊敬している。そういう人たちが作るテレビ朝日の番組は今も好きだ。

テレビ朝日の幹部、そして報道局の上層部には今度こそ、テレビ朝日で働く人たちの声を聞いて欲しい。

Source: ハフィントンポスト

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